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安心の回路と匂いを繋ぐ

知覚と内的感覚の関係において、まず知覚の方から安心感にアプローチ!という雑談を書いてみます。

専門家ではありません。科学的根拠もありません。ナラティブとしてお読みください

乳児は母親の匂いを嗅ぐことで安心感を得ています。

まだ本能だけが頼りの乳児にとって、親子の関係性の要素は視覚・体温や触覚・匂い・心音や音を頼りに構築していきます。

また、少し大きくなっても母子分離の過程で母親の匂いのするシーツや、自分の香りのするブランケット、いつもの触覚を感じられるぬいぐるみなどをベースキャンプとして、一人で寝れたり、母親から離れる時間や見慣れぬ景色のなかを探検できるようになっていきます。

(ぬいぐるみなどについては、たとえば皮膚的自我形成の過程、アニミズム、移行対象的機能など様々な要素、感覚についても多岐ですが、今回は嗅覚に限定。)

参考文献

Smelling This One Specific Scent Can Boost The Brain’s Gray Matter

Continuous inhalation of essential oil increases gray matter volume

薔薇の精油を一ヶ月に渡り衣服などに着けながら書いでもらうという実験で、灰白質(情報処理工場、記憶思考筋肉への伝令)・特に匂いの結びつけに関わる後帯状皮質のボリュームが増加した、というものがありました。

一方で、「扁桃体」や、快い匂いを処理する「眼窩前頭皮質(OFC)」には大きな変化は見られませんでした。

この結果は、香りを継続的に嗅ぎ続けることで、脳の中でも特に記憶や情報処理に関わる部位が刺激され続け、構造的な変化につながった可能性を示しています。

研究者らはまた別の解釈も提示しています。

バラの香りを常に感じ続けることで、扁桃体が「もう匂いに注意を向ける必要がない」と活動を抑える一方、後帯状皮質はその匂いに関する記憶や意味づけを処理し続けたため、より活性化したのではないかというのです。1

そして灰白質における後帯状皮質(以後pcc)は長期記憶とワーキングメモリを密接に結ぶ機能や

自己と外界との関係性の把握、記憶の想起、及び直感的な意思決定2における価値の評価3など

  • 他者の行動を予測しながら自らの行動を選択・判断をする際に報酬量に基づく4主観的な価値の計算
  • 過去の記憶が自分自身の体験であるかを照合 情動と結びつける
  • 何もしていない時(安静時、空想中、内省中や意識のない状態)に活動するDMNにおいての結節点、情報の中継

などの活動を行っています。

関連する症状

レビー小体型認知症(DLB)  アルツハイマー型認知症(AD) 行動障害型前頭側頭型認知症(byFTD)

気分障害(右後部帯状回灰白質量パターン) 神経性痩せ症(広範囲の灰白質体積の減少・中後部帯状回も対象)

など細かに違いはあるが 代謝や血流の低下が後部帯状回・楔前部・頭頂側頭連合野から始まり前に進んでいきます

一方その過程で一次感覚運動野・橋・線条体・視床・一次視覚野(レビーは後頭葉が低下)は温存されます

DMN

理路整然とした体系的な思考ではなく、とりとめのない思考をおこなう脳領域であるということがポイントで、このような思考を「さまよい思考(mind wandering)」とよびました。

 過去と未来の自分を展望しながら、現在の自分を考えることもこの思考の特徴です。デフォルト・モード・ネットワークにはさらに、内省して自分の言動を振り返ります。

記憶障害もですが特に見当識障害についてDMNで説明つけられないだろうか、と考えられていたりします。

犬は匂いを嗅ぐことで頭を使わなければ認知症になりやすいと言われていますが、人間も重なる部分があるのかもしれません。犬は鼻を使うとただ走るよりもグッと疲れるそうです。

薔薇の香りがアンカーにもなりうのか

不安な状態で世界を見れば、不安に見える。というのは様々な分野で言われている現象の一つです。

これは生物・動物が野生の中で生活していくのに当然の名残であり、機能とされています。

これを変換していくときに、現在の不安を引き起こす過去の似た体験が整理されることで予測される身体反応が自然となくなる。というものが負荷が少ないルートかもしれません。

意識的にそれを引き起こすとなると、身体の反応と、それにラベル付けされている文脈を変換させていくということが思い付きます。方法として、文脈の方を変化させていくこと【心臓がバクバクしている、怖い。→心臓がバクバクしている、体を起こして集中しようとやる気を出し始めたなど】。そして感覚の方を変化させていくこと【心臓がバクバクして怖い。→ぬいぐるみを触ったり、嗅ぎ慣れた匂い、好きな人と手を繋ぐ、怖いけど半分安心する、だんだんバクバクや怖さより、ぬいぐるみのふわふわに意識が向き出した、ぬいぐるみ、かわいい】となります。

感覚と運動は基本的に分離不可能な単一のもの(微妙かもだけど例えばlivre corps器官なき身体。胃は消化するもの、など機能や役割で固定される前の身体。)という概念から見てみると、ミラーニューロンで写し取った、他者の行為の観察(感覚)も切り分けることができず、ぞのまま自分の運動プログラム(心臓バクバクする、など)を部分的に活性化させることとなります。 なので先生の理論での邪魔の排除や、カウンセリングで自分で無い取り込んだ感覚をリリースしていくのは、治療抵抗の低下や外在化、外的要因や遺伝、家族療法の観点やその他からも(ナラティブセラピーやタッピング、精神分析としても)非常に有効ということがわかります。もちろんその他のトラウマケア療法も。 その身体感覚が完全な自分のものとしてしまうと消えない場合(トラウマ的文脈、脳の同期的な文脈でも)があるかもという前提を挟むことは重要なように思います。特に自然災害も多く子孫を残すために周囲の変化に敏感なことが求められたと予測される日本人は(戦争体験も含め)、不安やシュミレーションが鈍化せず、割と前面の回路として機能しているかもしれません。

その上で、それらの介入の間や、自分でできることを探してみる上でバラの匂いと安心感をつなげる行為はどうだろうか、というブログを書いてみています。

また、トラウマ患者のfMRI研究では感覚運動野は活性化する一方、言語野の活動は低下することが観察されたりしています。現象が言語的意味づけ・象徴化されず感覚運動のチャンネルに保存されるかもしれないそうです。

さらに不安障害に対しての一説についてこんなものがあります。

通常の知覚推論(見る・聞くなど)では、自分の予測と感覚入力が食い違うと、予測が更新されて知覚が変わるとされています。(怖いことが起こるはずだ!あれ、何も起こっているように見えないな。ではここは怖くないということだ、と修正される)。しかし運動制御では逆で、予測を固定し筋活動を動かして誤差を修正する(体を動かす時は、腕が上がる・すでに上がっているという予測が先に立つが実際は動いていない。あ、腕上がってないと予測を直すのではなくて筋肉をあげてそのズレをなくすことで、運動を完成させる)

これが通常なのだけれど、不安障害の場合は、知覚推論の場合も運動制御と同じように動いているのでは?というものです。

☆例えば心臓がバクバクしている→小走りした・コーヒー飲んだ・さっき不安で無意識に息止めてたなどを確認する→大丈夫かも(バクバクに対して推測や予測を修正)。これが、心臓がバクバクしている→これは一度始まったら収まらない・身体が危機にさらされている・倒れる何か要因が近くに迫っている・一人で対処できない、怖い、収まらない(ここの固定が強い)→心臓は長くバクバクしているべき、脅威が大きいからもっと大きくバクバクして身体を活性化するべきで心拍数が実際に上がる→(認知・予測)ほら!やっぱり危険だこんなにバクバクしている。で行動が強化・固着されていく。つまり予測が原因で、その予測通りの身体反応(動悸)が後から作られてしまう。本人にとって(意識上では)は「体が勝手に暴走してる」感覚になるけど、モデル上(無意識的な部分)は「体の方が、脳の思い込み(予測)に従わされている」という逆転が起きている、ということになる。

ここを、感覚の方から異なる数値を入力することで(バクバクしている時に具体的にバラの匂いで異なる身体刺激に。反芻やフラッシュバック、予期不安が止まらない時にも、快の身体刺激を入力(この時に暑い!とか汗で不快!とかを感じてたらループが止まらない。最初お風呂に浸かることが苦手な人が結構いたりします。脳内の予測が安心に慣れてくるまで、快感と不快感両方にも取れるお湯の刺激を気持ちいと結びつけにくい)

それを灰白質のボリュームも増えるお得なバラの匂いで、組み換えれたらラッキーじゃないか?と考えているわけです。

嗅覚アンカリングは『ボトムアップ』か『トップダウン』か

さて、トラウマの文脈でよく聞くこの二つですが、薔薇の匂いで安心感とつなぐアンカリングはどちらかに分類されるのでしょうか?

①嗅覚は五感の中で唯一視床を経由せずに大脳辺縁系に直接投射。

嗅球、梨状皮質、扁桃体、嗅内皮質という経路は、視覚や聴覚や体性感覚などが視床を経由し皮質下を通るのと異なる古い回路である。この回路は恐怖学習や情動学習の基盤。「匂いは考える前に情動を動かす」5かもしれません。匂いに伴う自伝的記憶(プルースト現象・マドレーヌ体験)は新皮質の言語的媒介を経ずに、匂いの情報がダイレクトに感情の中枢(扁桃体)や記憶の中枢(海馬)に届いてしまうかもしれないから。(余談ですけどトラウマケアしてたら匂いが再現されることってありますよね。私は脈絡のない匂いが出てくることが多い。不思議です)

②アンカリング 

アンカーという用語はパブロフ条件付けの応用として臨床に導入されたましたが、これもパブロフ型学習と言える。①により嗅覚条件付けは特に成立しやすい。

薔薇の匂い(中立刺激・最初は何とも思わない匂い・ベルの音)が、実際の安全な体験や身体の状態(無条件刺激・自動的に反応を引き起こすもの・エサ)と一緒に何度も嗅いでいるうちに(対提示・ふたつが同時に繰り返し起こる)、脳が薔薇の匂い=安全と結びつけて覚えた(条件反応・ベルの音だけで涎が出る)

③バラと灰白質の論文 

全脳灰白質体積および後部帯状皮質(PCC)の灰白質体積が有意に増加した

一方で、扁桃体および眼窩前頭皮質(OFC)の灰白質体積には有意な変化が見られなかった

匂い→情動の回路の扁桃体と、快不快の価値付などの眼窩前頭皮質は変化しなかった。代わりに記憶・連合学習・意味処理を行う後部帯状皮質が変化した。これは嗅覚系の入力が慢性的・持続的になると、扁桃体はもはや「新規の脅威/顕著性」として警報を発する必要がなくなり、その仕事をPCCが引き継いで匂いと記憶連合の保持・想起を担うようになるということかもと論じています。

意味すること

アンカーが成熟して相転移した?形成過程に時間的な相転移?

❶初期層(形成期):①②で薔薇の匂いと安心状態の連合強度が形成(シナプス可塑性、LTPが形成される)【long-term potentiation・強く使う繰り返し使うと回路の伝達効率が上がって繋がりやすいまま長期間キープ。少ない刺激でも同じ反応が起きやすくなる=記憶・学習が定着した】

❷成熟層(定着後):持続・反復的な曝露のもとでは扁桃体はもはや「警報」を発する必要がなくなる(慣化,habituation)匂いについての意味づけと想起の座がPCC(後部帯状皮質)に移行。これは今この匂いをどう(安心か警戒か)というリアルタイムでの衝動処理ではなく、どういう文脈を意味するか貯蔵された記憶から予期的に引っ張り出す。今薔薇の匂いをどう感じるか?ではなく安心という意味だったなと引き出してる

→これは☆(Fristonの自由エネルギー原理2010)でいうとトップダウンへの移行と言えるかも。”安心”という予測→予測に合わせて安心の匂いと感じるように動かす。

『効くはず』だという期待が痛みそのものに対して脳が先回りして弱めてしまうという、☆の構造的に似ているプラセボ効果のトップダウンの経路は前部帯状皮質・眼窩前頭皮質・下行性疼痛抑制系を介してボトムアップの侵害受容信号そのものを事前に減衰させる。です。薔薇が効いたところと違うのが興味深いです。

④SE・ポリヴェーガル理論・予測処理理論との接続

身体的リソース(安全な感覚の錨)を確立するとき、初回は必ず対提示(アンカリング)(餌とベル・身体感覚と安心できるイメージなど)が必要だが十分に確率されれば意識的な想起なしで自動的に安心の回路に切り替えることができる。→ボトムアップからトップダウンへという、構造的には類似しているように思えます。しかし迷走神経の切り替えはおそらく8割ボトムアップ的かもしれず、(☆応用型の内受容的推論、感情とは何か、体の内側からの信号(心拍・呼吸・内臓感覚)」という特定の入力チャンネルに絞って適用し、「主観的な感じ(feeling)」がどう生成されるか)また島皮質などの経路であり神経基盤としても別物。視床を経由するため内受容感覚そのものには適用で傷、匂いのアンカーはSEの理論から逸脱したものであると言えるかもしれません。

生の感覚処理の定義などがわかりませんが、おそらく意識にのぼりにくい無意識的な低次の階層では予測誤差最小化(☆的な)のプロセスであり、後帯状皮質(連想、意味付け)と前頭前野(特にmFC内側前頭前野、OFC眼窩前頭皮質、ACC前帯状皮質)(自分にとってどういうことか・物語化)島扁桃体視床に止まり続ける(感覚・心臓バクバク)これは母に見捨てられた時と同じだ、とか意味づけや物語化のストーリーを作らない。(先生の推測脳の部位は、ここにどういうストーリーを作りやすいのか、という重みづけとなる)

ここ特に、知識が足りず全体像も掴めてません。付け足します

具体的には?

好きな時に好きなだけの薔薇の香りを嗅ぐ

どんなバラの匂いが好きだろう、とたくさんの瓶の中から選びます。知らぬバラの名前を見ながら、そのある感覚のするひとつを私は手に取って、からだのある部分につけてみるんです。不安なことや、パニック、不快な反芻が1日の中で起こっても、半分の身体感覚の無意識の方では、常に半分バラの匂いがしているわけです。どんなことが起きても、わたしの預かり知らぬ半分のその領域で、隠されている大きな傷が勝手に半分バラの匂いに温かく包まれているような、そんな感覚をわたしは、電車、街中、横断歩道、苦手な上司、友達、好きな人、好きな風景の中、どこかに向かって歩いている途中、至る所の、無意識下の嗅覚と脳と身体という領域で、確かに起動しているわけです。自分の力を使わない、どこかの感覚の中で。

薔薇の匂いでなくても、常にわたしの半分は、心地よい香りに包まれて、安心を感じることができます。そう、香りによって、どんな時でも。握った片方の手の中なのか、その音を聞いている片方の耳なのか、地面を踏みしめるその足の片方なのか。そう、私のどこかの、はんぶんの温かさの、そのなかで。

出てきた感覚に蓋をするに近かったり、不快と紐づく時もあるので様子を見ながらお試しください。

  1. https://www.riken.jp/press/2015/20150421_1/index.html ↩︎
  2. https://www.riken.jp/press/2024/20240824_1/index.html ↩︎
  3. 「他人の利益を考慮する意思決定の脳回路」(2019年5月22日) ↩︎
  4. キャンプファイアーと欲望https://insight-fap.jugem.jp/?eid=5050 ↩︎
  5. Rachel Herz, “Odor-associative learning and emotion: effects on perception and behavior”, Chemical Senses, 2005; Herz, The Scent of Desire, 2007 ↩︎

認知症とはどのような病気か 脳の構造と仕組みから全体像を理解する(ブルーバックス、伊古田俊夫)

DMNとは

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