予てより大好きな詩を引用させていただきます。眠れない夜にスクリプト的に何度も読んでいました。今も思い出してはふと読む詩です。皆様は何を感じ連想しますか?
大男のための子守唄 茨木のり子
おやすみなさい 大男
夜 冴え冴えとするなんて
それは例外の鳥だから
まぶたを閉じて 口をあけ
お辿りなさい 仮死の道
鳥も樹木も眠る夜
君だけぱっちり目をあけて
ごそごそするのはなんですか
心臓のポンプが軋むほどの
この忙しさはどこかがひどく間違っている
間違っているのよ
おらが国さが後進国でも
駆けるばかりが能じゃない
大切なものはごく僅か
大切なものはごく僅かです
あなたがろくでもないものばかり
作っているわけじゃないけれど
お眠りなさい 大男
あなたは遠く辿っていって
暗く大きな森にはいる
そこはつめたい泉があって
ひっそりと燦めくものをふきあげている
あなたは森の泉から
一杯の清水を確実に汲みあげなければならない
ああ それが何であるかを問わないで
おやすみなさい 大男
一杯の清水を確実に汲みあげてこなければならない
でないとあなたは涸れてしまう
お眠りなさい 大男
二人で行けるところまでは
わたしも一緒にゆきますけれど